東京高等裁判所 昭和47年(ラ)336号 決定
仮執行の宣言は、未確定の判決に対し狭義、広義の執行力を付与する旨の宣言であって、その執行力の点は確定判決になんら異なるところはないけれども、本案の判決が未確定であるために、仮執行の宣言又は本案判決を変更する判決によって、その変更の限度において効力を失うものである(民事訴訟法一九八条参照)。すなわち、仮執行の宣言は、将来仮執行の宣言又は本案判決を変更する判決がなされるまでその効力を継続するにすぎない解除条件付の暫定的な措置である。このような仮執行宣言の効力の暫定性よりすれば、仮処分命令は、これを取消す仮執行宣言付判決によって完全に消滅するものではなく、一時的にその効力を停止する状態におかれるにすぎないものというべく、したがって、仮処分命令を取消す仮執行宣言付判決に基づく執行を民事訴訟法五一二条の規定によって停止する決定があった場合においては、この仮処分命令は、仮処分命令を取消す判決を取消しこれを認可する判決があった場合と同様、その効力を復活するものと解するのが相当である。もとより、仮処分命令を取消す仮執行宣言付判決を執行機関に提出することにより、すでになされた仮処分命令に基づく執行処分が取消されていた場合には、仮処分命令の効力が復活したからといって、執行処分まで当然に復活するものではないが、仮処分命令に基づく執行処分が、仮処分命令を取消す仮執行宣言付判決によって取消されないうちに、この判決に基づく執行が停止された場合には、前記執行処分は、結局適法な処分として、その取消を求め得ないことになる。本件において、執行停止決定のなされる以前に執行官によってすでに仮処分命令の執行の取消手続がなされていなかったことは、抗告人の自認するところであるから、仮処分命令の執行は結局適法になされていることとなり、執行官に対しその取消を命ずることはできないものといわなければならない。
(古関 田中 川添)